味噌・醤油醸造が発達した柳川
柳川は味噌(みそ)・醤油などの発酵文化が息づくまち。大正時代の記録には、山門郡の味噌の生産は福岡県内生産総額の約7割を占め、そのほとんどが柳河町、三橋町(現・柳川市)だと記されているそうです。
そんな柳川で明治3年に創業し、100数十年に渡って味噌を作り続けているのが、「ツルみそ」の名前で知られる鶴味噌醸造株式会社。
今回は、その鶴味噌醸造株式会社から2つの認定品を紹介します。

国の登録文化財・並倉を擁する鶴味噌醸造株式会社

昔から親しまれてきた家庭の味
使う麹で変わる味噌の種類
味噌の主原料は大豆。これに麹(こうじ)、塩、水を加えて発酵、熟成させてつくります。
麹とは米や麦、豆に麹菌をつけて繁殖させたもので、米に麹菌をつけたら米麹、麦につけたら麦麹、大豆につけたら豆麹となります。
この麹が味噌の種類を分けるポイント。大豆に米麹を加えたら米味噌に、麦麹を加えたら麦味噌になります。
全国で生産される味噌の約8割は米味噌で、約1割が麦味噌、残りの1割は合わせ味噌だとか。九州は麦味噌を好むといわれますが、柳川で人気なのは合わせ味噌です。

味噌の原料となる大豆
柳川では「合わせ味噌」が人気
合わせ味噌とは2種類以上の味噌を合わせたもので、調合味噌ともいいます。
そのつくり方は、米麹と麦麹を一緒に使ったり、出来上がった米味噌と麦味噌をブレンドしたりと、さまざまです。
鶴味噌では、米と麦の「合わせ麹」を使うのが特徴です。
まず、蒸した米・麦に麹菌を散布します。その後、室(むろ)とも呼ばれる、温度38~39度、湿度90~95%の円盤製麹機(えんばんせいきくき)に移し、2日半寝かせて「合わせ麹」をつくります。機械化しているとはいえ、温度管理をしながらの作業となり、気を遣うところです。

蒸した米、麦に麹菌をふり、製麹機で合わせ麹をつくる
米と麦に麹菌を散布した「合わせ麹」が特徴
そうしてできた「合わせ麹」を蒸した大豆、塩、水と混ぜて仕込み、発酵・熟成させていくので、鶴味噌の合わせ味噌は、発酵の段階から合わせ味噌になっているというわけです。

合わせ麹をつくる円盤製麹機
鶴味噌では米と麦の良いところを組み合わせようと、合わせ麹を使うようにしたそうで、合わせ麹をつくる際の米、麦、麹菌の配合は製造開始当初から変わっていません。
味噌づくりの工程は、どれもほぼ同じ。原料である大豆の蒸し方や蒸し時間、麹の種類や配合、塩の分量、発酵や熟成期間の違いなどによって味噌の味が変わり、それが商品の特徴となります。
程よい甘さと上品な口当たりが自慢の「白秋あわせみそ」
さて、前段が長くなってしまいましたが、認定品の紹介にいきましょう。
柳川が生んだ偉人・北原白秋先生の名前を冠した「白秋あわせみそ」は、文字通り「合わせ味噌」。故郷の味として地元の方々から長年愛されています。

まろやかで上品なくちあたりの「白秋合わせみそ」
「白秋あわせみそ」は合わせ麹を使い、蒸した大豆、塩、水をタンクに入れて仕込みます。

蒸した大豆、合わせ麹、塩、水をタンクに入れて仕込む
それを28度の温醸室(おんじょうしつ)に入れ、夏は約1カ月、冬は約3カ月間置いて発酵させます。
その後、18度以下の冷蔵室(15~16度)に移し、季節に応じて1~3カ月間熟成させて完成です。

原料を仕込んだ直後のタンク

仕込んだタンクは温醸室に移す。1日に約9トン仕込む
「白秋あわせみそ」は米味噌の甘さと麦味噌のコクがあり、味のバランスがいい。美しい白色で、味にクセがなく、上品な口当たりが魅力。ロングセラーというのも納得のうまさです。
熟成期間が長く、コクが強い「並倉熟成味噌やながわ」
「並倉熟成味噌やながわ」は原料に国産の大豆を使用。大豆を「から蒸し」するところが「白秋あわせみそ」と少し異なり、発酵と熟成期間は「白秋あわせみそ」に比べて約1~2カ月長くなります。

発酵後、冷蔵室に移して熟成させる。壁についた菌が醸造会社らしさを感じさせる
熟成期間が長いため、やや赤みを帯びた色になり、酸味とうまみ、コクが増します。塩味を感じる人がいるかもしれませんが、塩分量は「白秋あわせみそ」と同じ。酸味とコクの違いです。
この熟成味噌に合う料理もあり、こちらもロングセラー。「合わせ味噌」を意味する「ミックス」というパッケージの文字が時代を感じさせ、昔から愛されてきたことを示していますね。

「熟成味噌」は熟成期間が長く、酸味とコクが増す
伝統を守りながら健康食としての魅力を発信したい
味噌には加熱の工程がないため、菌がそのまま生きているのが特徴。江戸時代の書物には、気を穏やかにする、消化をよくするといった効能が記され、近年のように猛暑が続く夏には、ほどよい塩分と水分が熱中症予防によいとも言われます。
しかし、味噌の消費量は年々減少しており、「その良さを伝えていきたい」と、同社副社長の吉開雄治さんは話します。
同社では保育園などへの出前講座や、「タベルフェス」といったイベントを開催して若い消費者との交流を図るなど、新しいことにもチャレンジしています。

味噌の良さと旨さを伝えていきたいと語る吉開さん
「長く愛されてきた味なので、この伝統を守りながら、失敗を恐れずチャレンジしていきたい」と話す吉開さん。「中小企業だからこそチャレンジできる」と、味噌を使った万能調味料も次々と生みだしています。
別の記事で、その万能調味料「相撲味噌」をご紹介します。

会社の一部は直売所になっていて個人客も購入可能。気軽に入ってみて
【白秋あわせみそ】
◯価格:540円(1kg・税込)
【並倉熟成味噌やながわ】
◯価格:680円(1kg・税込)
◯取扱店:柳川よかもん館、御花、福岡県内外の百貨店、自社サイトでの通販、ほか
◯お問合せ:鶴味噌醸造株式会社 TEL 0120-37-2166
◯企業概要:明治3(1870)年創業。藍染業から始まり、その後、味噌醸造を主な商いとして今に続きます。安全安心で健康な食生活に貢献することをモットーに、創業当時の大きな梁やレンガ造りの並倉(国登録文化財)の残る工場で伝統の味を守り続けています。
※ホームページ→こちら
※記事の情報は2026年6月時点のものです。




