地元で「えいがんちょ」と呼ばれるアカエイ。有明海でとれ、昔からなじみのある魚です。このアカエイを使ったアヒージョが誕生しました。名前は「レイがんちょ」。製造販売する「味処 源六」の野口倫史さんにお話を聞きました。

有明海の新鮮な魚介を使って料理を提供する源六の野口倫史さん
創業50年の寿司屋がオリジナル商品を開発
「源六」は創業50年になる寿司屋。有明海などの新鮮な魚介を使って寿司や料理を提供してきました。

ランチや寿司など幅広いメニューで地元客に親しまれてきました
近年は海洋環境の変化や漁獲量の減少、食生活の変化などによってこの地域ならではの食文化の継承が難しくなっており、野口さんは「このままでは、有明海の魅力を後世に伝えていくことができない」という危機感を感じたといいます。
「有明海の水産資源を活用した新商品を開発したい」と思い、注目したのが「えいがんちょ」と呼ばれるアカエイです。
「えいがんちょ」は旨味が強く、昔から煮付けや唐揚げにして食されてきましたが、それを知らない若い世代が増えつつあります。「だったら、えいがんちょで加工品を作ってみよう」と思いついたと、いいます。

見た目はややグロテスクなアカエイ。身は軟らかく、煮付けに最適です
エイのイメージを一新する“アヒージョ”に挑戦
素材を決めたものの、さて、それをどんな商品にするか…!? エイを煮付けや唐揚げにして真空パックにしてみましたが、手間や設備の問題から断念。「お洒落な要素があって女性が手に取りやすいもの」として考えたのがエイをオリーブオイルに漬けた「アヒージョ」です。そこからさらに試行錯誤が始まりました。
市内の魚市場から直接仕入れたアカエイを使い、食品にするのはエイの身の部分のみ。毒のある尻尾、内臓、ヒレを取り除いて皮を剥き、使える部分は10キロのエイのうち半分ほどしかなく、手間ひまのいる作業です。

加工品にできるのはエイの半分ほど。手作業で丁寧に下処理をしていきます
当初、「身をオリーブオイルに漬ければいい」と安易に考えていましたが、食べてみると美味しくなかったのだとか。そのため塩水に漬け、調味液を手作りして漬け込みことに。塩水濃度、調味液に使う原料、調味液に漬ける時間などを変え、何度も試したといいます。
国産のニンニクを使い、うま味調味料・保存料なし
問題はエイ独特のにおいです。国産のニンニクや唐辛子を使うことにし、それぞれの割合を変えて、こちらも何度も試作を重ねました。
「そもそも食品製造が初めてで、瓶詰めの脱気さえ知らないほどだった」と振り返る野口さん。食品衛生についてイチから勉強。ヒット商品を生み出している地元の諸先輩にアドバイスをもらって作業を続け、原材料の量やエイの茹で時間、漬け込む時間などを細かく書きとめたノートは2冊に及びました。
「周囲からエイの加工品を作るなんて無理だと言われたし、うまくいくかどうかもわからない。だけど、もう、やるだけでした(笑)。プライベートブランドを作るのが念願だったし、ちょうどコロナ禍でこれ以上売上も気持ちも落ちることはないなと思って…」。
スタッフや常連客200人に試食を依頼して味を決定
試作品ができたら、スタッフや学生アルバイト、女性の常連客の皆さんに食べてもらったのだとか。「たぶん、従業員のみんなはもう食べたくないと思う」と野口さんが笑うほど試食を繰り返し、200人ほどに食べてもらった結果、「これなら!」と思うものが完成! 3年がかりでの完成となりました。

ニンニク、唐辛子を入れてピリッとした味に仕上げました
味は3種類。シンプルな旨味にひと粒アーモンドがアクセントとなっている「White」、唐辛子でピリ辛に仕上げた「Red」、そして、ニンニク多めで食欲をそそる「Blue」です。

3種類が完成!
ひと匙すくって食べてみたら、ニンニクがしっかり効いてピリっとした味。エイの身は軟らかく、コリッとした軟骨もあります。
サラダやパスタに和えても、キノコや他の魚介を入れて温めておつまみにしてもいい。バゲットにチーズを乗せてカナッペにすれば、ワインなどにもよく合います。

そのままパスタにも
うまみ調味料や保存料は含まれておらず、コラーゲンたっぷりで美容と健康にもいい品です。小さめの瓶詰めで、使いやすいサイズになっています。

パスタやカナッペに合います
地元の人も驚く、まさかのエイでおもてなし!?
ちなみに、エイの英語名はレイだから、商品名は「レイがんちょ」。ラベルの有明海をイメージしたイラストはスタッフの手によるものです。
広報チラシには、柳川の「まさかのエイでおもてなし」の文字も。確かに、エイを煮付けで食べてきた地元の人にすれば、あのエイが洋食に!?と驚くはずです。「柳川の食文化を継承していきたい」という野口さんの思いの詰まった逸品の“まさかの味”をお試しください。

ラベルは有明海をイメージしています
■DATA
◯商品名:RAIGANCHO(レイがんちょ)」
◯価格:「White」「Red」「Blue」各1,296円(80g・税込)
◯取扱店:味処源六(地図)、柳川市観光案内所、西鉄柳川駅からたちスペース、魚食普及推進施設うおざ(福岡市)ほか
◯お問合せ:味処源六 TEL 0944-85-3300 ホームページ
◯店舗概要:「目利きで選んだ有明海の新鮮な魚介と経験豊富な調理技術でお客様満足度100%を目指します!」を理念に、長きに渡って地元に愛されてきた寿司店。