苦みと酸味のバランスよいコーヒー豆、柳川で誕生

投稿日:

天候不良による生産量減少や円安などさまざまな要因によってコーヒー豆の高騰が続く昨今、ここ柳川でコーヒー豆の栽培が行われています。

杏里ファーム

杏里ファームになっているコーヒーの実

栽培する木は全部で1,500本。
栽培から焙煎まで行う杏里ファームの椛島大翔さんにお話をお聞きしました。

杏里ファーム

コーヒーの木を栽培する杏里ファーム・椛島大翔さん

米からマンゴーまで幅広く栽培する杏里ファーム
杏里ファームはい草の栽培から始まり、その後、米や麦、野菜、マンゴー、パッションフルーツなどを栽培。“カバちゃんキャンデー”のアイスでもおなじみです。
春はブーゲンビリアの咲くビニールハウスにおひな様を飾って一般開放するなど、農園の新しい試みとしても注目されます。

柳川ひなまつり

ひなまつり期間中、ブーゲンビリアの咲くハウスを一般公開

杏里ファーム

一般公開中はハウス内にカフェや売店を併設。カバをかたどった頭の裏は柳川の文字が…

コーヒーの木は、10年ほど前、大翔さんのお父さんが知人からもらったのだとか。やがて実がついたため、種子をとって発芽させたといいます。
当時、南国フルーツの栽培を始めており、さまざまな栽培を試す中の一つでした。

その後、大翔さんは視野を広げようとハワイの農業研修に参加。コーヒー農園でコーヒーについて学んだ後、2019年から杏里ファームで本格的にコーヒー栽培を始めました。

種子から苗木を育て収穫から焙煎まで
杏里ファームの土はコーヒーの木の栽培にやや不向きのため、鉢植えにしています。
実を収穫できるまで2~3年かかり、最初は種子から苗木を育てる日々。

当初は温度や湿度の管理、肥料や水やりなどの加減がわからず、花にカビがついたり、実がつかなかったりしたのだとか。
しかし、「栽培をやめようとは思わなかった」と言います。「改善すればいいのだから」。

3年前に収穫できるようになり、最初の収穫量は5キロでした。
その後も苗木を育てる一方、成木から実を収穫し、自家焙煎を行いました。

杏里ファーム

ハウスではコーヒーの可憐な花が咲いていた

この3年間で成木は増え、昨年の収穫量は60キロに。今後1,500本すべてで収穫できれば、300キロに増える予定です。

鉢植えで育て、減農薬で自家製肥料を使用
杏里ファームで栽培する木は日本人の好みに合うといわれるアラビカ種を中心に3種類。「安心安全の豆をつくりたい」とできるだけ農薬を使わず、肥料には同ファームの米ぬかをブレンドしたぼかし肥料を使っています。

杏里ファーム

コーヒーの木はハウス内の鉢植えで育て、今では1500本に

味は苦みと酸味のバランスがよく、ややフルーティーな味わいも。ブラックコーヒーが苦手な人にも飲みやすいコーヒーです。品質を保つため、注文後に焙煎して販売しています。

鮮度と品質を保つため、国内の産地を増やしたい
また、コーヒーの木を栽培したいという方には苗木の販売もしています。栽培に興味を持つ人は年々増え、遠くは北海道から苗木の相談があるのだそうです。

大翔さんいわく「コーヒーの木は他の作物に比べて手がかからないほう」だとか。両性花なので自家受粉し、蜂を使った受粉などをする必要がありません(杏里ファームで舞う蜂は蜂蜜を取るため)。うまく育てば1本の木に多くの実がなり、手で収穫できるといいます。

杏里ファーム

熟すとコーヒーチェリーと呼ばれる綺麗な赤色に。手で摘んで種子を取り、乾燥などを経て販売へ

収穫量を増やすことも可能な中、苗木を販売する理由は「日本にコーヒーの産地を増やしたい」から。
日本で国産豆の流通量は少なく、国産と外国産の豆をブレンドして販売するところが多いのだといいます。

海外で収穫された実が豆となり、輸入されて日本の消費者の手元に届くまでに1年近くかかるらしく、その間、鮮度は落ち、品質も劣化しかねません。国内に産地が増えていけば、安心安全で新鮮、高品質の豆を多くの人に届けられます。

ですから「うちの商品が売れてほしいというより、国産豆が増えてほしい」と、大翔さんは話します。

農業を楽しみ、「柳川ならではの味」を生み出せたら…
土や温度、風通し、水、また収穫後の乾燥の仕方によって味は変わり、まだまだ試行錯誤のところがあるのだとか。栽培の場所や方法、作り手の好みが豆の特徴になるため、「柳川らしさ」を引き出せたら、ともいいます。大翔さんは、その探求を楽しんでいる様子です。

「楽しく農業をしたいから」と、大翔さん。「自分たちで作って自分たちで価格を決め、直接販売して消費者の顔が見えるのは嬉しくて楽しい。自信を持って農業をやれる」と話します。作り手のワクワクする気持ちが、リラックスのひとときにふさわしいコーヒーを生み出しているのかもしれませんね。

杏里ファーム

栽培から焙煎まですべて自社で行い、安心安全な商品をお届けしている

さて、お味は!?と思ったら、なんと売り切れ! 「国産コーヒーはすぐ売り切れてしまう」のだそうで、残念ながら買えませんでした…。
商品はボンラパスなどで販売し、リッツカールトン福岡や大丸福岡天神店「カフェ博多小町」などで味わえます。柳川生まれのコーヒーを、一度味わってみてください。

■DATA
◯商品名:椛島珈琲園 焙煎豆
◯価格:2,700円(50g・税込)
◯取扱店:ボンラパス、リッツカールトン福岡ほか
◯お問合せ:杏里ファーム(地図)TEL 0944-73-8120 →ホームページ
◯企業概要:「魅せる農業」をモットーに、米、麦、大豆、コーヒー、蓮根、マンゴーなどを栽培。アイスクリーム類や冷凍フルーツ、餅、蓮根チップなど農園産の作物を使った加工品の製造・販売も行う。

-,,,,,

投稿者プロフィール

ツツミ
ツツミ
柳川市大和町出身。幼少の頃は体が弱くて本がお友達。以来、書くのが好きになりました。リズムを意識した文章で柳川の“わくわくドキドキ”を発信していきます。
(写真はパワーチャージ中)