平成23年に柳川ブランド品に認定された「白雪堂 越山」の越山餅。5代目大林俊明さんに話を伺いました。
数寄屋風の店構え。軒先の暖簾をくぐると、店内にはきれいに並べられた和菓子が表れます。
ハルカ 竹 井 | こんにちは〜。 |
大林さん | こんにちは。 店内は、色鮮やかなさげもんが飾られ、華やかな雰囲気でお客さんを迎えてくれます。 |
大林奥様 | どうぞ〜。 (越山餅とお茶、姫小町(もなか)をいただく) |
ハルカ | ありがとうございます。(ヤッター) 越山餅のはじまりについて教えてください。「越山」は「こっさん」という初代店主の愛称からついた名前だとお聞きしました。 |
大林さん | そうなんですよ。初代は治平(ちへい)というのですが、義太夫(ぎだゆう)※の師匠でした。 芸名を「越太夫(こしだゆう)」といいました。「越太夫さん」と呼ばれ、そこから「越さん」となり、越さんが作る餅ということで、「越さん餅」。それから「越山餅」となりました。※ 義太夫…浄瑠璃の一派のこと。 |
ハルカ | へぇ〜。人の名前がこんなに変わっていくのかー。愛称を商品名に仕上げたところが面白いですね。なじんだ名前が商品名たっだら、呼びやすい。 |
大林さん | 越山餅は、風流茶人でもあった治平が、茶席用の菓子として作ったものがはじまりです。当時は「千歳すし」とも呼ばれていて、江戸時代に京や江戸、金沢で作られていた「千歳鮓(ちとせすし)」の系統ではないかと言われています。 |
ハルカ | ルーツがあるのか〜。「千歳すし」が柳川で徐々に「越山餅」になっていったのですね。柳川市には“越山”という名前のお店が2軒ありますよね?どういうご関係なのですか? |
大林さん | 治平の2人の息子が跡を継いだのですが、兄がうちの「白雪堂 越山」、弟さんが「梅花堂 越山」としています。100年以上も昔の話ですので、今はそれぞれが、それぞれの味や方法で作っていますね。味の違いはありますが、もちろん食べる人の好みですね〜。 |
ハルカ | うんうん。それで2軒あるのですね。 どちらも長く続くお店。 |
ハルカ | 越山餅を作る際、大切にされていることは何ですか? |
大林さん | 素材と自家製餡にこだわっています。 |
ハルカ | ふむふむ。詳しくお願いします。 |
大林さん | 北海道十勝産の手亡豆と、熊本産の白玉粉。 工房、見るね? |
ハルカ・竹井 | 見たいです! お邪魔します。 |
工場へ)
越山餅は、餡を求肥(ぎゅうひ)※で包んだ、餅物。餡と求肥の話を聞きます。
※求肥…白玉粉に砂糖や水飴を加えて練りあげたもの。
大林さん | これが手亡豆。十勝産。白インゲンのこと。 |
ハルカ | 白い〜。これが餡になるのですね。何で手亡豆を使うのですか? |
大林さん | 白い餡には手亡豆が一番。昔からここの手亡豆を使いよる。この豆を煮て、砂糖を加えて練りあげるのですよ。餡を専門に作っている業者さんもいらっしゃいますけど、自家製の餡。独自の味を守りたいので、自家製にこだわっています。 |
竹井 | こだわりの餡ですね。自家製の餡は、今ではとても少ないんじゃないかなぁ。そうだ、白玉粉は熊本産ですよね。 |
大林さん | そう。 |
ハルカ | 熊本? |
大林さん | 色々試してみたけど、熊本のが良かった。質が均一やったけん。この白玉粉に砂糖と水飴を加えて求肥をつくります。餡を求肥で包む作業は、以前は手作業でした。私の代で、この機械を作ったから、ふんわり仕上げつつ早く包めるようになりました。 |
ハルカ | まさか…特注ですか? |
大林さん | 特注ですよ。 |
ハルカ | 越山餅を包むための特注機械…。越山餅のふんわりの秘密がここに! |
大林さん | 餡と求肥を別々に入れると… 出てくる時には一緒になって流れてきます。今日はもう作業は終わったけど。 |
ハルカ | (こんな感じかな…。ちょこんと可愛い。) |
店内へ戻ります。
ハルカ | 越山餅のパッケージについてお聞きしたいのですが、「越山餅」の文字は誰が書かれたのですか?カッコいいと思って。 |
大林さん | 私の父かな。50年以上前に大阪の印刷屋さんと一緒に作り上げました。 |
ハルカ | 50年以上も前から。どこにもない文字だから、頭に残ります。細身で遊びがあって…しばらく見てられる〜。 |
大林さん | どうぞ食べてください。 |
ハルカ | (あ、試食。) |
竹井 | 白いの(餅とり粉)ついてますよ。大林さんが思う、越山餅に1番合う飲み物は何ですか? |
大林さん | やっぱり緑茶かな。 |
竹井 | 緑茶の苦みがいい。 |
ハルカ | うん。合うー。美味しいです。昔から作り方は変わらないのですか?大切にされていることは何ですか? |
大林さん | 作り方は変わりません。これからも自分ところの味で作っていきたいと思っています。自家製の餡を大切にしていきたいですね。国内産の材料にもこだわりたい。 |
ハルカ | 柳川自慢のお土産になります。これからの夢はありますか? |
大林さん | 越山餅を大切にしていくこともありますが、越山餅に並ぶような看板商品を作りたい。現在、私と妻と息子夫婦とでお店を切り盛りしています。息子たちと新しいものも作りたいですね。 |
小さな和菓子「越山餅」には150年以上も続く歴史と、これからも大切にする大林さんの想いが込められていました。
白雪堂越山
柳川市細工町64
電話&ファックス0944-72-2082