認定品を探る旅

株式会社水産堂

投稿日:2019年12月25日 更新日:


「具と酒粕を一緒に食べる」という特徴をもつ九州の粕漬。有明海に面する柳川市では、タイラギ貝の貝柱や海茸の粕漬が 食卓で楽しまれてきました。平成23年に柳川ブランド品に認定された貝柱粕漬、海茸粕漬について3代目海部(かいぶ)達也さんに話を伺いました。

ハルカこんにちは。
竹井今日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします。
ハルカ早速、水産堂のはじまりからお聞きします。
はい。創業は1923(大正12)年ですね。
ハルカ今年(平成26年)で91年ですね!
はじめられた方は…
はじめたのは私の祖父ですね。
(戦時中は休業していましたので正確には91年間ではありませんが…)
ハルカお店ができてから、粕漬を作ったのですか?
粕漬ができてから、「売ろう!」とはじまったみたいです。じいちゃんのお兄さんが、「有明水産試験場※」で働いていたんですね。そこで「こういうの(貝柱・海茸の粕漬)を作らんかい」って言われたのがはじまりのようですね。
※現在名 福岡県水産海洋技術センター/有明海研究所。水産資源を守り、漁業の発展や県民への新鮮な水産物の安定供給をはかるため、各種の試験研究や漁業者への普及指導などに取り組んでいます。
ハルカおじさんの一声で?
私の祖父は、満州鉄道で働いていて引き揚げてきました。そのときに「仕事は何をしようかね。」となって、おじさんの言葉を受けてはじめたようです。
ハルカなるほど。柳川で生活していくために…。柳川で採れる海産物に目をつけられたのですね。おじさんは粕漬に詳しかったのですか?
海産物研究所なので貝の知識があったんでしょうね。

昔は捨てるほど採れてたらしいです。貝柱は冬場にしか採れません。そして冷蔵庫もない時代でした。冬場にたくさん採って、1年中食べられるようにする方法はないやろか?とはじまったみたいですね。
ハルカそしたら…結構もつんですよね?
基本的に、え〜賞味期限は1ヶ月としていますけど、ん〜結構もちますね。保存方法をしっかりやらんといけんですけど。今は冷蔵庫があるからですね。ただ、味は落ちます。※公表している賞味期限は約1ヶ月です。

それから…作ってすぐは、実は美味しくないです。塩分濃度が高くて塩辛い。酒粕と混ぜてしばらく置くことで、塩分が抜けてほどよい濃度になります。
ハルカもたせるための塩加減と味… 塩分は重要ですね。
そうです。良い加減をみつけるのが難しく、経験してやっと感覚がわかってきます。そしてお店に並ぶ頃、丁度良い味加減になるように作っています。
ハルカ<言葉では表せない、職人さんの感覚って格好いいですね。/td>

私も? 一緒に? いただきます

ハルカパッケージのラベルは長く使われているのですか?
色々変わっていますね。ちょっと持ってきますね。
ハルカ今使っているものですか?
そうですね。これは今のデザインになるんですけど、これももうだいぶなりますもんね。約30年…
ハルカ30年…長く使ってもらえるっていいな〜絵は誰が描かれたのですか?
絵はですね、柳川市にお住まいの方です。現在80歳くらいの方です。自転車で買い物に来られますよ。新旧ともに同じ方のデザインです。
ハルカはぁ〜地元の方が。いいですね〜。生活している土地の風景ですもんね
竹井竹でできた支柱の頃の風景ですね〜。いいなぁ。
そうですね昔の風景。
ハルカ文字も?
たしか。
ハルカかっこいいー。古い方の…これ…あれっ。原画じゃないですか!?貴重な〜! これまたリアルな海茸ですね。
サンプルかな?
竹井ん? このロゴ…。
水産堂のマークです。剣道の胴があるじゃないですか。水産堂の「水」と三つの「胴」の形で「水産堂(水3胴)」らしいです。
ハルカはぁ〜。おもしろいー。上からみた胴ですね。 ん…何で剣道の胴?
関係は…ないかも…ですね。
ハルカははは。いい!(礼にはじまり礼に終わる。礼儀が込められているのかも!)
粕漬づくりのはじまりは、酒粕を運ぶところからはじまります。30kgの袋に入ってきた酒粕を6尺樽…直径1m80cmくらいの樽に入れます
ハルカ人力で運ぶのですか
なんだか最初から大変そうですね。
そう人力です。ホーローの樽の中に人が入り、酒粕を下にひいて、人が足で踏み固めていきます。酒粕に含まれている空気を抜くためですね。
竹井保存に関係あるのですか?
はい保存性をよくするためですね。それから、堅さを均一にしたいというのがあります。お酒が飲めない人は、ここで酔っぱらいますねー。私は身長1m88cmですけど、やりはじめたときは酔っぱらってしまって…おやじに「まだまだやね〜」って言われましたね。
ハルカふふふ。海部さん … 大きいですね!
ははは。その後も大変。約1ヵ月寝かせたあと、スコップで掘り出して小さな樽に小分けしていきます。保存室に入るように。品質を安定させるために低温保存します。直径1m80cm×高さ2mの穴を掘る感じです。かなりきついです。1日頑張って…大きい樽1つ半くらい。なかなか手間のかかる作業です。酒粕の堅さとか、味は毎年違います。お酒のできが違うのと同じです。絞り方も関係があるようです。
ハルカ色々試されて、今の酒粕にたどり着いたのですね。
うちでは酒粕を下図の※でブレンドして使っていきます。昨年のものに今年のものを加えていく。品質を安定させるためのブレンドです。さらには味をつないでいる感じですね。
ハルカへぇ〜! 秘伝の酒粕ですね。深みがありそう。
粕漬づくりの流れをまとめると…
ハルカ……試食させていただいても…。
はいはい。よかですよ。
ハルカ具の入った粕漬は珍しいとですよね?
具と一緒に食べるのが珍しいみたいですね〜
ハルカ私は貝柱の粕漬を…いただきま〜す。
ハルカんふふふ。あっ、おいしい! 粕漬のきめを細かくすることで、なめらかになってますね〜。
竹井おれは海茸。うめぇわ〜。コリコリしてうまいっ!
ハルカご飯ー。あつあつのご飯と一緒に、“もふっ”って食べたい。
ご飯は…ないですね〜(笑)
竹井ブランド認定品になって、反響はありましたか?
東京からのお客様に「このシールが欲しい。」と言われました。柳川で認定されているということは、柳川の外の方に喜ばれるみたいですね。 他には、お客様へのお知らせに認定品に選ばれたことを表記したところ、関西や関東の方から「良かったねー。」という言葉をかけていただきました。
ハルカそれは〜嬉しいですね。シールが貼ってあるというのは、選ばれたものの証ですもんね。
最後に、これからの企みを教えてください。
そうですね〜目指せ100年!ですね。
ハルカいいですね! それでいきましょ!

【アルコールメモ】
粕漬を食べる量とビールを飲む量は同じみたいですね。


前の記事
皿屋福柳
次の記事
白雪堂越山