「具と酒粕を一緒に食べる」という特徴をもつ九州の粕漬。有明海に面する柳川市では、タイラギ貝の貝柱や海茸の粕漬が 食卓で楽しまれてきました。平成23年に柳川ブランド品に認定された貝柱粕漬、海茸粕漬について3代目海部(かいぶ)達也さんに話を伺いました。
ハルカ | こんにちは。 |
竹井 | 今日はよろしくお願いします! |
よろしくお願いします。 | |
ハルカ | 早速、水産堂のはじまりからお聞きします。 |
はい。創業は1923(大正12)年ですね。 | |
ハルカ | 今年(平成26年)で91年ですね! はじめられた方は… |
はじめたのは私の祖父ですね。 (戦時中は休業していましたので正確には91年間ではありませんが…) | |
ハルカ | お店ができてから、粕漬を作ったのですか? |
粕漬ができてから、「売ろう!」とはじまったみたいです。じいちゃんのお兄さんが、「有明水産試験場※」で働いていたんですね。そこで「こういうの(貝柱・海茸の粕漬)を作らんかい」って言われたのがはじまりのようですね。 ※現在名 福岡県水産海洋技術センター/有明海研究所。水産資源を守り、漁業の発展や県民への新鮮な水産物の安定供給をはかるため、各種の試験研究や漁業者への普及指導などに取り組んでいます。 | |
ハルカ | おじさんの一声で? |
私の祖父は、満州鉄道で働いていて引き揚げてきました。そのときに「仕事は何をしようかね。」となって、おじさんの言葉を受けてはじめたようです。 | |
ハルカ | なるほど。柳川で生活していくために…。柳川で採れる海産物に目をつけられたのですね。おじさんは粕漬に詳しかったのですか? |
海産物研究所なので貝の知識があったんでしょうね。 |
昔は捨てるほど採れてたらしいです。貝柱は冬場にしか採れません。そして冷蔵庫もない時代でした。冬場にたくさん採って、1年中食べられるようにする方法はないやろか?とはじまったみたいですね。 | |
ハルカ | そしたら…結構もつんですよね? |
基本的に、え〜賞味期限は1ヶ月としていますけど、ん〜結構もちますね。保存方法をしっかりやらんといけんですけど。今は冷蔵庫があるからですね。ただ、味は落ちます。※公表している賞味期限は約1ヶ月です。 |
それから…作ってすぐは、実は美味しくないです。塩分濃度が高くて塩辛い。酒粕と混ぜてしばらく置くことで、塩分が抜けてほどよい濃度になります。 | |
ハルカ | もたせるための塩加減と味… 塩分は重要ですね。 |
そうです。良い加減をみつけるのが難しく、経験してやっと感覚がわかってきます。そしてお店に並ぶ頃、丁度良い味加減になるように作っています。 | |
ハルカ | <言葉では表せない、職人さんの感覚って格好いいですね。/td> |
私も? 一緒に? いただきます。
ハルカ | パッケージのラベルは長く使われているのですか? |
色々変わっていますね。ちょっと持ってきますね。 | |
ハルカ | 今使っているものですか? |
そうですね。これは今のデザインになるんですけど、これももうだいぶなりますもんね。約30年… | |
ハルカ | 30年…長く使ってもらえるっていいな〜絵は誰が描かれたのですか? |
絵はですね、柳川市にお住まいの方です。現在80歳くらいの方です。自転車で買い物に来られますよ。新旧ともに同じ方のデザインです。 | |
ハルカ | はぁ〜地元の方が。いいですね〜。生活している土地の風景ですもんね |
竹井 | 竹でできた支柱の頃の風景ですね〜。いいなぁ。 |
そうですね昔の風景。 | |
ハルカ | 文字も? |
たしか。 | |
ハルカ | かっこいいー。古い方の…これ…あれっ。原画じゃないですか!?貴重な〜! これまたリアルな海茸ですね。 |
サンプルかな? | |
竹井 | ん? このロゴ…。 |
水産堂のマークです。剣道の胴があるじゃないですか。水産堂の「水」と三つの「胴」の形で「水産堂(水3胴)」らしいです。 | |
ハルカ | はぁ〜。おもしろいー。上からみた胴ですね。 ん…何で剣道の胴? |
関係は…ないかも…ですね。 | |
ハルカ | ははは。いい!(礼にはじまり礼に終わる。礼儀が込められているのかも!) |
粕漬づくりのはじまりは、酒粕を運ぶところからはじまります。30kgの袋に入ってきた酒粕を6尺樽…直径1m80cmくらいの樽に入れます | |
ハルカ | 人力で運ぶのですか なんだか最初から大変そうですね。 |
そう人力です。ホーローの樽の中に人が入り、酒粕を下にひいて、人が足で踏み固めていきます。酒粕に含まれている空気を抜くためですね。 | |
竹井 | 保存に関係あるのですか? |
はい保存性をよくするためですね。それから、堅さを均一にしたいというのがあります。お酒が飲めない人は、ここで酔っぱらいますねー。私は身長1m88cmですけど、やりはじめたときは酔っぱらってしまって…おやじに「まだまだやね〜」って言われましたね。 | |
ハルカ | ふふふ。海部さん … 大きいですね! |
ははは。その後も大変。約1ヵ月寝かせたあと、スコップで掘り出して小さな樽に小分けしていきます。保存室に入るように。品質を安定させるために低温保存します。直径1m80cm×高さ2mの穴を掘る感じです。かなりきついです。1日頑張って…大きい樽1つ半くらい。なかなか手間のかかる作業です。酒粕の堅さとか、味は毎年違います。お酒のできが違うのと同じです。絞り方も関係があるようです。 | |
ハルカ | 色々試されて、今の酒粕にたどり着いたのですね。 |
うちでは酒粕を下図の※でブレンドして使っていきます。昨年のものに今年のものを加えていく。品質を安定させるためのブレンドです。さらには味をつないでいる感じですね。 | |
ハルカ | へぇ〜! 秘伝の酒粕ですね。深みがありそう。 粕漬づくりの流れをまとめると… |
ハルカ | ……試食させていただいても…。 |
はいはい。よかですよ。 | |
ハルカ | 具の入った粕漬は珍しいとですよね? |
具と一緒に食べるのが珍しいみたいですね〜 | |
ハルカ | 私は貝柱の粕漬を…いただきま〜す。 |
ハルカ | んふふふ。あっ、おいしい! 粕漬のきめを細かくすることで、なめらかになってますね〜。 |
竹井 | おれは海茸。うめぇわ〜。コリコリしてうまいっ! |
ハルカ | ご飯ー。あつあつのご飯と一緒に、“もふっ”って食べたい。 |
ご飯は…ないですね〜(笑) | |
竹井 | ブランド認定品になって、反響はありましたか? 東京からのお客様に「このシールが欲しい。」と言われました。柳川で認定されているということは、柳川の外の方に喜ばれるみたいですね。 他には、お客様へのお知らせに認定品に選ばれたことを表記したところ、関西や関東の方から「良かったねー。」という言葉をかけていただきました。 |
ハルカ | それは〜嬉しいですね。シールが貼ってあるというのは、選ばれたものの証ですもんね。 最後に、これからの企みを教えてください。 |
そうですね〜目指せ100年!ですね。 | |
ハルカ | いいですね! それでいきましょ! |
【アルコールメモ】
粕漬を食べる量とビールを飲む量は同じみたいですね。