ハルカ・河口 こんにちは〜。今日はよろしくお願いします。
松石 さんこんにちは。いらっしゃい。
ハルカ | 速、お話を伺っていきます。へそ栗山本舗 松福は、昭和57年創業と聞きました。どのような始まりだったのでしょうか? |
松石さん | 親父は柳川にあった菓子屋「千歳屋」の次男坊でした。祖父が始めた菓子屋で煎餅、落雁、料理菓子やまんじゅうを作っていました。親父は、昭和14年に独立開業。そのお店が「松福」です。開業後、すぐ戦争が始まって親父は徴用で三池の三井染料工場へ。 そして徴兵へ。戻ってからは体調を崩し、しばらくして亡くなりました。親父が亡くなった時私は中学1年生やったですね。だから私は、親父に菓子作りを教わってないとですよ。それで私は高校を卒業して、弟子に行きました。 |
ハルカ | どちらで何年修行されたのですか? |
松石さん | 柳川の川崎さんのところに修行に行きました。老舗和菓子店の職長※をされてた方です。3年間修行しました。 ※作業現場において、労働者の指揮・監督・指導にあたる人 |
ハルカ | 何で3年間だったのですか? |
松石さん | はやく商売したい。だから、荒削りやったですね。 |
ハルカ | 3年間ということは …。 |
松石さん | 21歳です。あの当時はそういう人達が多かった。荒削り。親父が始めた「松福」を母が切り盛りしていました。修行から戻り、私が後を継ぎました。 その後、親父の店(井出橋)から今の店(筑紫町)に移転しました。移転が昭和57年です。その際、小売り屋の店になるなら、ぜひ、何か柳川の名物になるメイン商品ば作らにゃいかんて思て。一生のうちに1つは銘菓ば作らにゃいかんち思って商品を考えよったわけです。 |
ハルカ | それが「へそ栗山」になるのですね。 |
銘菓「へそ栗山」は、柳川市中心地にある「臍繰山」という小山が元となり誕生しました。始めに、「臍繰山」のいわれを紹介致します。(へそ栗山商品説明書きより一部抜粋)
菓子についている説明書きより
ハルカ | 「へそ栗山」の元となった「臍繰山」と哲男さんにはどのような思い出があるのですか? |
松石さん | 私は、柳川商業高校(現在の柳川高校)に通っていました。それが「臍繰山」との出会い(柳川高校は臍繰山のそばにあります)。ずっとこの山を眺めながら学校に通っていました。当時は今の倍くらいの大きさがありました。戦後になって中学校を建てるときに、山を切り崩して学校や運動場を作ったのです。私が眺めてた頃は、鳥居があって、お稲荷さんがあったですたいね。山の下の方に。 |
松石さん | お稲荷さんの裏んほうには、狐さんがおるような竹林。渦巻きのように登る道、広場や石垣があってその上に山ができとるとです。頂上に見晴らせる場所があります。近くの小学生の遠足の目的地にもなっていたみたいですね。 臍繰山を上からみた道のイメージ |
松石さん | 北と南から登る渦巻きの道。子ども達はよーいドンで走って登る。「早ぐっちょ」と言うかな。 だから、ここには思い出があるわけです。皆ここで遊んでいたからですね。私の思い出と、皆さんが持ってる思い出をお菓子にしたとですたいね。 |
ハルカ | 柳川の名物を。と考えられたときに、すぐモチーフとして「臍繰山」がうかんだのですか? |
松石さん | えぇ、えぇ。皆さんが知ってある、可愛がってある。作ろうと思った時は、もう学校が出来ていて半分くらいの大きさの山になっていました。それで、名前だけでも残したい! と思って。その時はもう皆さん名前を忘れてあったですもんね。 |
ハルカ | そうなんですね。このお菓子のおかげでまた名前を呼ぶようになったのですね〜。名前を呼ぶと、皆さんそれぞれの思い出が浮かぶのだろうなぁ。「臍繰山」がお菓子になって「へそ栗山」に。 |
ハルカ | 商品はこちらだけで販売されているのですか? |
松石さん | 当時はそうですね。今は御花の前の黒田屋さん、おいでメッセでも販売してますよ。置いてくというところもあるばってん。そう…なかなか。できない。饅頭を作る機械はあるけどですね。あることにはあるですけど…。 |
ハルカ | 機械は使っていない? |
松石さん | そう。機械を使わずに毎日少しずつ作りよるですたい。だからそんなに量を作りきらん。手づくりやっけんですね。 |
ハルカ | なるほど。手作業で丁寧に作られているのですね。 |
松石さん | 多数ご注文の場合は、ご予約いただけるとありがたかですね。ご注文いただいてから、集中して作業時間をとりますんで。その場合も商品管理は特に注意して、おいしく、安全にお届けしますよ。2、3日でお客様に提供できるよう、日夜努力しとります。 |
ハルカ | なるほど。そんなへそ栗山が作られていく過程をお聞きしてもいいですか? |
松石さん | あぁ、よかですよ。 1.蜜づけした栗を黄身餡で包んで丸めていきます。 2.皮(がわ)カステラ饅頭の生地でさらに包みます。 手で包んでいきます。 3.そして上に渦巻き上の型を押していく。 4.30分オーブンで焼く。 |
松石さん | 自分でつくっとる型です。螺旋型。 機械で押すわけではないので、なかなか全て同じようにはいかん。“オヘソ”みたいになるものもあるですたい(笑)。 |
ハルカ | へぇ〜(笑)。 1つ1つ形が違うとですね。比べてみるのも楽しいですね。このぐるぐるは可愛か〜。 |
松石さん | これはね、臍繰山のイメージもあるけど、中に火が通りやすくするためでもあるとですよ。 |
ハルカ | はぁ〜! なるほど。 |
ハルカ | 最初にへそ栗山を作られる時に意識されたことを教えてください。 |
松石さん | 頭を出すとなると、「美味しい」は第一条件ですたいね。それから色形、食感や日持ち。今日作ってもすぐに販売せず、1日おいて販売するよう計画しています。 1日置くことで、もどり※が良くなります。外皮がしっとりした状態で食べられる。店頭に並んで1日〜2日が食べごろです。※もどり … 種(ここでは栗)と餡がなじんでくること。 |
ハルカ | 出来立てだからいいってもんじゃないんですね〜。餡はここで練って作っているのですか? |
松石さん | はい。餡屋さんから生餡を買って、うちで練って黄身餡にしています。季節による湿度の変化を意識して、餡の練り具合や、皮の糖度、小麦粉の量を調整しています。そうすることで、餡と皮のカステラ生地がなじみ、一体となっていきます。味や食感の違うものを自然に楽しむことができるのです。 |
河口 | 今の形になるまでに、色々試されたのですか? |
松石さん | はいそうですね。チョコレートで仕上げようかとか。羊羹で仕上げようかとか。チョコレートで仕上げると日持ちのよかでしょうが。他には、栗を使うから、栗饅頭式にしようか…とか。色々試したですたい。でも結局カステラ饅頭式に落ち着きました。 |
ハルカ | 栗を使ったのは、へそくり山だから“くり”…クリ…栗…で栗を使うことになったのですか? |
松石さん | はっはっは。そうそう。そして使う栗は、皮や餡に合う柔らかい栗を探してきました。色々試行錯誤したですよ。渋皮栗を使っていた時もあります。 (息子さん登場)また復活させたか〜と思いよるですよ。 |
ハルカ | いいですね〜! それは食べてみたいです。 松石さんのこれからの野望はありますか? |
松石さん | ははは。野望ですか。最近、体験学習の講師をすることがあります。 和菓子を通して柳川を知ってもらいたい。柳川の伝統的なお菓子を伝えていきたいですね。 皆さんと楽しみながら。これは大きな話になりますが、川下りコースの途中にちょっと寄り道できる、和菓子を楽しむことのできる場所を作って楽しんでもらえたら…。と思いますね。 へそ栗山からずれちゃったかな…? |
ハルカ | ふふふ、とても素敵なお話です。そんな思いを持った松石さんが作られるへそ栗山。間違いなく柳川への思いたっぷりですね。 |