認定品を探る旅

へそ栗山本舗 松福

投稿日:2019年12月25日 更新日:

ハルカ・河口 こんにちは〜。今日はよろしくお願いします。

松石 さんこんにちは。いらっしゃい。

ハルカ速、お話を伺っていきます。へそ栗山本舗 松福は、昭和57年創業と聞きました。どのような始まりだったのでしょうか?
松石さん親父は柳川にあった菓子屋「千歳屋」の次男坊でした。祖父が始めた菓子屋で煎餅、落雁、料理菓子やまんじゅうを作っていました。親父は、昭和14年に独立開業。そのお店が「松福」です。開業後、すぐ戦争が始まって親父は徴用で三池の三井染料工場へ。
そして徴兵へ。戻ってからは体調を崩し、しばらくして亡くなりました。親父が亡くなった時私は中学1年生やったですね。だから私は、親父に菓子作りを教わってないとですよ。それで私は高校を卒業して、弟子に行きました。
ハルカどちらで何年修行されたのですか?
松石さん柳川の川崎さんのところに修行に行きました。老舗和菓子店の職長※をされてた方です。3年間修行しました。
※作業現場において、労働者の指揮・監督・指導にあたる人
ハルカ何で3年間だったのですか?
松石さんはやく商売したい。だから、荒削りやったですね。
ハルカ3年間ということは …。
松石さん21歳です。あの当時はそういう人達が多かった。荒削り。親父が始めた「松福」を母が切り盛りしていました。修行から戻り、私が後を継ぎました。
その後、親父の店(井出橋)から今の店(筑紫町)に移転しました。移転が昭和57年です。その際、小売り屋の店になるなら、ぜひ、何か柳川の名物になるメイン商品ば作らにゃいかんて思て。一生のうちに1つは銘菓ば作らにゃいかんち思って商品を考えよったわけです。
ハルカそれが「へそ栗山」になるのですね。

銘菓「へそ栗山」は、柳川市中心地にある「臍繰山」という小山が元となり誕生しました。始めに、「臍繰山」のいわれを紹介致します。(へそ栗山商品説明書きより一部抜粋)


菓子についている説明書きより

ハルカ「へそ栗山」の元となった「臍繰山」と哲男さんにはどのような思い出があるのですか?
松石さん私は、柳川商業高校(現在の柳川高校)に通っていました。それが「臍繰山」との出会い(柳川高校は臍繰山のそばにあります)。ずっとこの山を眺めながら学校に通っていました。当時は今の倍くらいの大きさがありました。戦後になって中学校を建てるときに、山を切り崩して学校や運動場を作ったのです。私が眺めてた頃は、鳥居があって、お稲荷さんがあったですたいね。山の下の方に。
松石さんお稲荷さんの裏んほうには、狐さんがおるような竹林。渦巻きのように登る道、広場や石垣があってその上に山ができとるとです。頂上に見晴らせる場所があります。近くの小学生の遠足の目的地にもなっていたみたいですね。

臍繰山を上からみた道のイメージ
松石さん北と南から登る渦巻きの道。子ども達はよーいドンで走って登る。「早ぐっちょ」と言うかな。
だから、ここには思い出があるわけです。皆ここで遊んでいたからですね。私の思い出と、皆さんが持ってる思い出をお菓子にしたとですたいね。
ハルカ柳川の名物を。と考えられたときに、すぐモチーフとして「臍繰山」がうかんだのですか?
松石さんえぇ、えぇ。皆さんが知ってある、可愛がってある。作ろうと思った時は、もう学校が出来ていて半分くらいの大きさの山になっていました。それで、名前だけでも残したい! と思って。その時はもう皆さん名前を忘れてあったですもんね。
ハルカそうなんですね。このお菓子のおかげでまた名前を呼ぶようになったのですね〜。名前を呼ぶと、皆さんそれぞれの思い出が浮かぶのだろうなぁ。「臍繰山」がお菓子になって「へそ栗山」に。
ハルカ商品はこちらだけで販売されているのですか?
松石さん当時はそうですね。今は御花の前の黒田屋さん、おいでメッセでも販売してますよ。置いてくというところもあるばってん。そう…なかなか。できない。饅頭を作る機械はあるけどですね。あることにはあるですけど…。
ハルカ機械は使っていない?
松石さんそう。機械を使わずに毎日少しずつ作りよるですたい。だからそんなに量を作りきらん。手づくりやっけんですね。
ハルカなるほど。手作業で丁寧に作られているのですね。
松石さん多数ご注文の場合は、ご予約いただけるとありがたかですね。ご注文いただいてから、集中して作業時間をとりますんで。その場合も商品管理は特に注意して、おいしく、安全にお届けしますよ。2、3日でお客様に提供できるよう、日夜努力しとります。
ハルカなるほど。そんなへそ栗山が作られていく過程をお聞きしてもいいですか?
松石さんあぁ、よかですよ。
1.蜜づけした栗を黄身餡で包んで丸めていきます。

2.皮(がわ)カステラ饅頭の生地でさらに包みます。

手で包んでいきます。

3.そして上に渦巻き上の型を押していく。

4.30分オーブンで焼く。
松石さん自分でつくっとる型です。螺旋型。
機械で押すわけではないので、なかなか全て同じようにはいかん。“オヘソ”みたいになるものもあるですたい(笑)。
ハルカへぇ〜(笑)。
1つ1つ形が違うとですね。比べてみるのも楽しいですね。このぐるぐるは可愛か〜。
松石さんこれはね、臍繰山のイメージもあるけど、中に火が通りやすくするためでもあるとですよ。
ハルカはぁ〜! なるほど。
ハルカ最初にへそ栗山を作られる時に意識されたことを教えてください。
松石さん頭を出すとなると、「美味しい」は第一条件ですたいね。それから色形、食感や日持ち。今日作ってもすぐに販売せず、1日おいて販売するよう計画しています。
1日置くことで、もどり※が良くなります。外皮がしっとりした状態で食べられる。店頭に並んで1日〜2日が食べごろです。※もどり … 種(ここでは栗)と餡がなじんでくること。
ハルカ出来立てだからいいってもんじゃないんですね〜。餡はここで練って作っているのですか?
松石さんはい。餡屋さんから生餡を買って、うちで練って黄身餡にしています。季節による湿度の変化を意識して、餡の練り具合や、皮の糖度、小麦粉の量を調整しています。そうすることで、餡と皮のカステラ生地がなじみ、一体となっていきます。味や食感の違うものを自然に楽しむことができるのです。
河口今の形になるまでに、色々試されたのですか?
松石さんはいそうですね。チョコレートで仕上げようかとか。羊羹で仕上げようかとか。チョコレートで仕上げると日持ちのよかでしょうが。他には、栗を使うから、栗饅頭式にしようか…とか。色々試したですたい。でも結局カステラ饅頭式に落ち着きました。
ハルカ栗を使ったのは、へそくり山だから“くり”…クリ…栗…で栗を使うことになったのですか?
松石さんはっはっは。そうそう。そして使う栗は、皮や餡に合う柔らかい栗を探してきました。色々試行錯誤したですよ。渋皮栗を使っていた時もあります。
(息子さん登場)また復活させたか〜と思いよるですよ。
ハルカいいですね〜! それは食べてみたいです。
松石さんのこれからの野望はありますか?
松石さんははは。野望ですか。最近、体験学習の講師をすることがあります。
和菓子を通して柳川を知ってもらいたい。柳川の伝統的なお菓子を伝えていきたいですね。
皆さんと楽しみながら。これは大きな話になりますが、川下りコースの途中にちょっと寄り道できる、和菓子を楽しむことのできる場所を作って楽しんでもらえたら…。と思いますね。
へそ栗山からずれちゃったかな…?
ハルカふふふ、とても素敵なお話です。そんな思いを持った松石さんが作られるへそ栗山。間違いなく柳川への思いたっぷりですね。

前の記事
鶴味噌醸造
次の記事
マルホ