認定品を探る旅

鶴味噌醸造

投稿日:2019年12月25日 更新日:

40〜50年も昔から、柳川市民の舌に慣れ親しんできた「白秋あわせみそ」。米と麦のあわせ味噌です。平成24年に柳川ブランドに認定された「白秋あわせみそ」について、みそソムリエの山田ゆかりさんにお話を伺います。

(ハルカ)こんにちは。
(河口)よろしくお願いします。
(山田さん)こんにちは。

早速、山田さんはツルみそでどれくらい働かれているのですか?
17年です。
山田さんは、「みそソムリエ」の資格をお持ちですよね?

みそソムリエmemo・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
みそソムリエ認定協会が認定する資格です。みそソムリエは、味噌文化を人々に伝えていく味噌の伝道者と言われています。
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奇跡的に取れましたね 笑。2年前ですかねぇ。(2015.1現在)社長がね、行っておいでって言ってくださったのですよ。でも、取れなかったら自腹だよって。…冗談ですけどね 笑。
ははは。みそソムリエに認定されるには、どのような勉強が必要なのですか?
みそソムリエになるには、資格講座を受けなくてはなりません。勉強する内容ですが、まずは味噌の歴史ですね。味噌は大昔中国から渡って来たとか、お殿様や武士しか食べることができなかったとか。そこから、一般の家庭で食べられるようになって…そういう歴史の話を勉強します。その後味噌の中の麹菌はどういう働きをするかを習い、味噌をテイスティング。最後にテストがあります。
へぇ〜。今聞いただけで、味噌について知らなかったことが色々ありました!
ふふふ、そう?

お話をお聞きする前に、ちょっと味噌造りの工程を確認。

私は味噌を舐めても、きっと違いを語れるような舌を持っていないのですが…「白秋あわせみそ」は他と比べてどのような味噌なのですか?
最初に「あわせ」についてですが、もともとツルみそは、米味噌が主流でした。けど、やっぱり、九州というか地域性もあるんだと思いますが、米と麦のあわせ味噌というのが、この辺りでは多いですね。全国味噌マップというのをみると、九州は麦味噌というくくりにはなっているんですが…筑後地方のメーカーはあわせ味噌を作っているところが多いです。あわせるってことは、製造所ごとの配合の割合で、味に違いがでるのですか?
あわせるってことは、製造所ごとの配合の割合で、味に違いがでるのですか?
そう、そうです。配合とあとね〜麹菌。「蔵に菌が住む」っていうんですけど、麹菌はそこそこの醸造蔵で違うんですよ。ウチで熟成の手前まで準備したとしても、別の味噌蔵で熟成をすると、ウチの味には全くならない。

ウチの発酵室、天井や壁にも麹菌が住んでいるんですよ。
へ〜!

ここで少しツルみそのお堀り側「並倉」のご紹介。

並倉memo・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ツルみその味噌発酵室は、大正元年頃から7(1918)年頃に建てられた、レンガ造りの建物です。当時は麹室として使われていました。詩人北原白秋に「並倉」とうたわれ、平成12年には、国の登録有形文化財建築物に指定されています。川下りのコースも近く、散歩をする地元の方や観光に来られた方に楽しまれています。
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その当時建てられたレンガ造りの建物の中では、レンガの積み方が珍しいとか。
よく知っていますね〜。「フランス積み」といいます。調査に来られた方もいらっしゃいました。その当時は、イギリス積みが主流だったようです。
へぇ〜。並倉の楽しみ方の1つですね。ここで、麹菌が育っていったのですね。


ちょっと横道にそれましたが…。貯蔵庫には、柳川のお堀沿いで140年余り続く、ツルみそならではの麹菌がいるのですね。
るというはっきりとした証拠があるわけではないんですよ。ただ、先程も話しましたが、蔵によって味噌の味が違うというのは、やっぱり住んでいる麹菌に何か関係があるのではないか。と私は思っているのですよ。
並倉の風景や、柳川の風土が麹菌を育て、それが味噌の味になっている…かもしれない。はっきりしないところが、ロマンですね。お味噌は生きていて繊細なものに感じてきました。 蔵に住んでいる麹菌と別に、種付けをする麹菌というのは、購入されているのですか?
そうです。麹菌というのは、色々と開発されています。その中から、ウチの麹菌はこれがいいのでは?と選んだものだと思います…。
はぁ、はぁ。いいと決めた決め手は? どういう理由ですか?
どういう…40年〜50年も昔につくりはじめた商品ですので、今ではわからないのですが、味がしっくりくる。原料によく「はぜる」。そんな麹菌を選んだと思いますよ。
「はぜる」?

はい。麹菌がこう、米とかに入り込んでいって…。でん粉などをよく分解してくれるんです。
ツルみそに合う…麹菌があるんですね〜。配合の方にはどんな特徴があるのですか?
この辺りはどっちかというと、大豆、米、麦等の配合がほぼ同じくらいです。この配合に慣れている方には、愛知辺りのお味噌汁は少ししょっぱく感じるかもしれません。配合がまた違うのです。味噌は、お米の分甘くなってくるんですよね。お米はずっと噛んでいたら甘くなりますよね。
なるほど。
そういう米の甘みを感じられるのが、あわせ味噌。この近辺の味噌は、お味噌汁にしたとき、ふわっと甘味が感じられる…しょっぱさの中に甘味を感じられる。
なるほど。お米の甘味に、ツルみそならではの麹菌が付いて、また味が深くなるのですね。
そうですね〜。
お味噌は繊細なので、毎回同じ味にするのは難しそうですね。
同じになるよう、できた味噌は熟成具合をチェックしています。もう出してもいいだろう。とか、もう少し寝かせようとか。温度・湿度で熟成具合が変わってきますので。毎朝行っていますよ。
菌は生きているから、毎日の気候で変わってくるのかぁ〜。味のチェックを毎日行うおかげでいつもの味が楽しめるのですね!
はい。設立当時からの製法を守って、季節に応じて熟成期間を変えるなど、品質保持に努めています。柳川を離れた方にも懐かしんでもらえるように頑張っています。
涙。
購入しやすいように、金額も意識しています。お味噌を使った料理がいつも食卓に並んでくれるといいな。と。
500円(税別)は買いやすいです。ありがたい。
お店に来てくださるお客様の中に、「赤い線が入ったやつ」と注文される方もいらっしゃいます。何だか愛着を持ってくださっているようで。嬉しいです。
真ん中に赤い線がドンと入ってますもんね(笑)地元の方に愛されている感じがしますね。山田さんが味噌を使って作る料理で一番好きな料理って何ですか?
お味噌はみそ汁かな。やっぱり。白秋あわせみそは、毎日の食卓におすすめできる、飽きのこない上品な味を意識しているんですよ。
普段使い…というか、定番な感じですね。
冷やご飯がたくさん余っているときは…「味噌雑炊
味噌雑炊!?
味噌で味付けして…。
他に何も入れないで?
そう。それから〜忙しいときは鍋ですね。ガーッと野菜とか突っ込んでー最終的に味噌入れて、もうみそ汁なのか何なのか。
はは〜! 美味しそう! なるほど。話は変わりますが、工場見学も行われていますよね? 見学に来られる方は多いですか?
毎年20校くらい。小学生がやってきます

へぇ〜20校も! それは市内ですか? 市外?
最近市外も増えて来ていますね。

そうなんですね〜。受け入れはいつ頃からされているのですか?
かなり前からやっていましたね。給食センターでうちの味噌を使ってくださっていたところが来てくれていました。年に1、2校。確か、小学校3年生で穀物がどう使われるかの授業があるんですね、それで見学にやってきます。それから、市外へ転勤した先生がうちを紹介してくれているみたいなんです。
へぇ〜。
工場長が学校の名前を聞いて、「近くに◯◯ってスーパーがあるやろ? そこにうちの味噌がある。」ということも紹介してるんですよ(笑)。
ははは〜見学して話を聞いたら、味わってみたくなりますよ〜。

そうやって小さい頃からツルみそさんの味噌に慣れ親しんで覚えちゃうんですね。


米、麦、大豆を混ぜるところ。重さ約1t。


小さい頃から慣れ親しんで、大きくなっても思い出すことができる。そんな味を守り続けているツルみそさんの白秋あわせみそでした。