味わい深い大人のクリスマスケーキ「シュトーレン」

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1913年に創業した「ケーキのカトウ」。今ほど洋菓子のなかった時代から洋菓子を作り、柳川市民にとって身近な存在です。

ケーキのカトウ

筑後平野の小麦粉を使った「ケーキのカトウ」のロングセラー商品

ここで作る「クリスマスのシュトーレン」が絶品と評判。その美味しさの秘密を、代表の加藤幸平さんにお聞きしました。

ケーキのカトウ

創業112年の老舗菓子店、3代目の加藤さん

ドイツの伝統的なクリスマス菓子「シュトーレン」
シュトーレンとは、ドイツの伝統的なクリスマス菓子。一般的にはバターたっぷりの生地に洋酒に漬け込んだレーズンやナッツを練り込んで焼きあげたもので、日持ちがするため、クリスマスの約1ヶ月間味わえます。見た目は地味ですが、作るには大変手のかかる菓子です。

シュトーレン

ケーキのカトウのシュトーレン

加藤さんがシュトーレンに出会ったのは今から約30年前、東京の修業先だった菓子店でした。日本にシュトーレンを持ち込んだドイツ人マイスター、ゴッツェ氏がシュトーレンを作っていたからです。

昔ながらの徒弟制度で技術を身につけていたゴッツェ氏。独自のレシピを持っていましたが、門外不出の極秘扱い。現在のように周囲に公開せず、一緒に働くスタッフにさえ、伝えていませんでした。そのため皆、自分の小遣いでシュトーレンを買い、原材料や味を確認していたといいます。加藤さんもその一人。その味わいは長く心に残りました。

シュトーレン作りに挑戦するも最初は全く売れず
柳川に帰郷して店を継いだ加藤さん。取引先からシュトーレンのレシピを教えてもらって50本ほど作りました。しかし、当時はクリームや果物でデコレーションしたケーキが主流だったため全く売れなかったのだとか。

加藤さん自身もゴッツェ氏との味の違いを感じていたもののシュトーレンを焼くのは年に1回。下準備に手間と時間を要するため、試す機会は少なく、技術力も向上しなかったといいます。

思うように作れない年が続き、加藤さんは思い切ってレシピを破棄。お菓子の本と昔の記憶を頼りに作り直すことにしました。「発酵の技術が足りない」と感じた加藤さん、昔、店でパン作りをしていたお父さんに教えを乞うたのでした。

地元素材と自家製にこだわり、フードロス&地域貢献
柳川はブドウの産地。「規格外のブドウでジェラートを作ってほしい」という依頼が舞い込みました。それをきっかけに規格外のブドウを譲り受け、種を取ってオーブンで乾燥させ、自家製のセミドライブドウを作り始めました。

ケーキのカトウ

柳川で収穫された規格外のブドウを活用

店では父の代から、自家製の生クリームを作り、レモンの皮を剥いてピールを作り、アーモンドを粉砕させたアーモンドプードルを作るというように、原材料の多くを手作りしていました。

手間のかかる作業に同業の洋菓子店は呆れ気味に驚きましたが、「自家製がうちの特徴であり、良さだ」と続けていたのだとか。そのため、セミドライブドウ作りに何の抵抗もなかったと、加藤さんはいいます。
また、このセミドライブドウは濃厚のため、洋酒に漬ける必要がなく、アルコールの苦手な方も食べられるシュトーレンを作ることができます。

ケーキのカトウ

ブドウの種子を取り、乾燥させて濃縮なセミドライのブドウを手作りしています

近郊を見渡せば、オレンジの代わりになる山川ミカンがあり、筑後平野で収穫された石臼挽きの小麦粉もあります。「地元ならではのものを使ってオリジナルのシュトーレンができるのではないか」と、原材料の半分以上を地元素材に変えました。

ケーキのカトウ

何日もかけてゆっくり砂糖水で煮詰めていくと、浸透圧によって糖液が皮に浸透して皮の水分が抜け、保存料を使用しなくても長期保存が可能です

ケーキのカトウ

筑後地区で取れた柑橘類を使用し、地域ならではのお菓子にこだわっています

ケーキのカトウ

自家製のピールは小さく刻んで生地に練り込みます

長きにわたって続く菓子作りの精神と技術が結集
祖父から3代にわたって培ってきた菓子作りの精神と技術、地元の原材料、修業先での記憶、そして愚直なまでの自家製へのこだわりを結集させ、できあがったのが「Weihnachten Stollen(ヴァイナハテン・シュトーレン)」です。

ケーキのカトウ

自家製の原材料で完成させたシュトーレン

スタッフ全員が店を離脱するという窮地に陥った時、同窓生らがシュトーレンを220本購入してくれて救われたと、加藤さんは振り返ります。さまざまな思いが交錯し、今では加藤さんにとっても大切なお菓子の一つとなっています。

最初は硬めに思えるシュトーレンですが、日が経つほどに味がしみ、徐々にしっとりとした舌触りに。ドライフルーツのほのかな甘みと風味豊かな味わいは、まさに大人のクリスマスケーキといえるでしょう。購入した人からは「美味しくて、クリスマス前に食べ終わりそう」という声も聞かれました。

年明けからすでに注文がスタート!
セミドライブドウや柑橘類のピール、アーモンドプードルを使ったマジパン作りといった作業を約1年かけて行うため、年明けには早くもシュトーレン作りが始まります。

2025年は900本を作る予定。3つのサイズを用意し、従来の味の他に、クリスマスシーズン以外でも年中楽しめるシュトーレンの開発も予定しています。
すでに注文は始まっており、早くもクリスマスが楽しみです。

■DATA
◯商品名:Weihnachten Stollen(ヴァイナハテン・シュトーレン=クリスマスのシュトーレン)
◯価格:本年度仕込み/小2,000円・中4,200円・大6,480円 熟成/中5,800円・大9,000円(すべて税込)
◯取扱店:ケーキのカトウ(地図) ※ネット販売あり
◯お問合せ:ケーキのカトウ TEL 0944-73-9469 →ホームページ
◯企業概要:創業112年になる柳川の老舗洋菓子店。「原材料を自社で加工する」技術によって、市販されていない材料を独自に作り、味わい深いオリジナル商品を生み出している。

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投稿者プロフィール

ツツミ
ツツミ
柳川市大和町出身。幼少の頃は体が弱くて本がお友達。以来、書くのが好きになりました。リズムを意識した文章で柳川の“わくわくドキドキ”を発信していきます。
(写真はパワーチャージ中)