認定品を探る旅

高橋商店

投稿日:2019年12月25日 更新日:


柚子胡椒の液体。これまでになかった、新しい商品「ゆずすこ」。ゆずすこは、これまで作り続けてきた商品とは全く違って見えますが、実はこれまでの商品作りの延長に生まれた商品でした。平成23年に柳川ブランド品に認定された「ゆずすこ」について、14代目の高橋努武(つとむ)さんにお話を伺います。

こんにちは。
よろしくお願いします。
なんなりと、聞いてくださいね!
ありがとうございます。それでは、さっそく。「ゆずすこ」には、柚子と酢が使われていますが、その素材に出会われたきっかけというのは…?
もともと、うちは30年くらい前から柚子胡椒を作っていたんですね。
えっ、そうなんですか?
はい。そこがまず柚子との出会いですよね。…何で柚子胡椒を作るようになったかというところまでさかのぼると…。
… お願いします。
うちはもともと造り酒屋だったんですね。そして、私の前の前の代に酒造りを辞めて、お酒を造る過程で出る酒粕を使い、粕漬けをつくりはじめました。その粕漬けが「有明漬」なんですけど、これが我が社のメーカーとしての出発点です。
なるほど。
粕漬けは、具材をまず塩漬けにして、あとで粕に混ぜるという製法なんですけど。もともと柳川…有明海沿岸地方に江戸時代から伝わる食文化なんです。生ものを保存するための…。さらに塩漬けして熟成させるんですね。アミノ酸とかの旨味成分をだす。
それと同じ作り方でできるのが柚子胡椒なんですよ。柚子の皮を塩漬けします、唐辛子を塩漬けします、そしてブレンドします。作り方が似てるんで、柚子胡椒もできるんじゃないか?ということで、作りはじめたんです。
へぇ〜!
塩漬けし、熟成させる。という製法が同じなんですね。だから、粕漬け屋さんが柚子胡椒を作っているところは多いんですよ。そんなんで、柚子胡椒との出会いがまずありました。
なるほど。
いよいよ柚子胡椒とお酢の出会いですが…。
はい。いよいよ…。
柚子胡椒が美味しいねという声を頂いている中で、お客様に使い勝手、衛生上の面でご指摘をいただくことがありました。例えば…鍋の際、ポン酢に混ぜてみると、混ざりにくい。ペーストなので、だまになったり。料理に使いづらい。あと、衛生的に箸を使わずに利用できないかと…。

それなら、もう一回改良してみようかというのがこの商品開発のきっかけですね。

お客様の意見を具現化した商品なんです

でも柚子胡椒に水を入れて液体にするだけだと、ただ薄くなった柚子胡椒。それではいけないということで、色々調味料とかドレッシングとか市場を調べたんですね。そしたら、液体のもの…例えばドレッシングには必ずお酢が入っているんですよ。液体じゃないマヨネーズにもケチャップにも。じゃあお酢で液体にしたらどうか? ということになりました。
へぇ〜。そうやってお酢にたどりついたのですね。
お酢は、抗菌作用、そういうのもありますけど、もともとの素材の良さを保つという役割も持っている。柚子胡椒の良さを保ってくれる。
開発にはどれくらいかかりましたか?
1年半くらいですかね。週に1回商品の開発会議をずっとやって、それで1年半。
お客様からの意見はよくあるのですか?
そうですね。ちょこちょこ。
その中で、「よし、作ろう!」と開発に至ったのは、何かきっかけがあったからですか?
きっかけというか…同じ意見が結構多かったからですね。工程は、最初は一つの商品(柚子胡椒)を作っているのですが、途中から2つに別れるんですね。
今販売されている柚子胡椒は、ゆずすこの素なんですね。
そうです。先ほど、週に1度会議を行っていると言いましたが、その名前を「商品開発改良会議」と言っています。「改良」という言葉が入っている。今ある商品を、お客様の意見を基に改良しましょう。という会議です。
ゆずすこの登場は、新しいものが出てきたという感じだったのですが…。
そうでしょ(笑)、全然ちがうんですよ。延長、延長。
そうなんですね〜。へぇ〜。粕漬けが柚子胡椒につながって、さらにそれがゆずすこにつながっているというのは、発見でした。
そうでしょ、なんで粕漬け屋さんがゆずすこを作りよるかっていうのが、まわりの方にはあまりイコールにはなってないみたいですね。「あんたんとこで、作りよったとね」と言われます(笑)。柚子胡椒が液体になったことによって、幅広い料理に使えるようになったんですね。柚子胡椒は薬味だけど、液体になって調味料になった。
調味料に…なるほど。
我々は、もともと柚子胡椒を作っていたので、「柚子胡椒の液体」って呼んでますね。
ゆずすこという名前は、高橋商店さんの…。
そうです、商標登録してある。ゆずすこの語源は知っていますか?
知らないです。聞きたいです!
ゆずすこの「ゆず」は柚子ですね。「す」がお酢の酢です。「こ」が、胡椒の胡。
胡椒?
九州では、辛いもの、唐辛子を「胡椒」と言いますね。その頭文字をとって、ゆず・す・こ。ですね。
ゆずすこは、誰が考えた名前ですか?
これがわからないんですよね。誰が言ったか覚えていない。ただ、私が反対したのだけは覚えています(笑)。「タバスコみたいやけんやめようよ。」と。
ははは。やめようよ、と言われても皆さんがやりたいということになったんですか?
まぁ、皆がね、これはこれで面白いんじゃないですか?ってね。じゃあ、やってみようと。うちは商品は社長が作るんじゃなくて皆で作るということでやっているんで。
いいですね。材料にはどんなこだわりがありますか?
柚子に関して言えば、九州にはたくさん柚子の産地があるのですが、30数年我々が柚子を扱ってきて、一番香りが高い柚子を使用しています。果実の時に香りが高いのはもちろんなのですが、加工品にしたときに香りがきちんと残っている。今ずっと使用している、宮崎県東米良産の柚子が、香りが高いんです。香りの高さが一番のこだわりの部分ですね。

それと…お酢は、100種類くらい試したんですね。2種類まで絞って、最後はその2種類をブレンドしています。柚子胡椒に合う、柚子胡椒の味をうまく出してくれるお酢を見つけました。

唐辛子は、沖縄産とタイ産のブレンドなんですね。どんな唐辛子が必要かというと、青くて辛い唐辛子を探してきました。沖縄の場合は契約栽培しています。ただ、辛いのは日本にあまりないんですよ。何でないかというと、辛い唐辛子というのは肥沃な土地には育たないんです。痩せた土地にしか。厳しい状況にしないと、辛い唐辛子は育たないんですよ。人間もそうでしょ?

唐辛子は、沖縄産とタイ産のブレンドなんですね。どんな唐辛子が必要かというと、青くて辛い唐辛子を探してきました。沖縄の場合は契約栽培しています。ただ、辛いのは日本にあまりないんですよ。何でないかというと、辛い唐辛子というのは肥沃な土地には育たないんです。痩せた土地にしか。厳しい状況にしないと、辛い唐辛子は育たないんですよ。人間もそうでしょ?
(ドキッ…)こだわりが盛りだくさんですね。
我々が求めている最終的な商品に合う材料を厳選厳選しています。その中でも一番はやっぱり柚子の香りでしょうね。
飲み方!?
えぇ、焼酎に垂らしたり。カクテルに使ってもらったり。
へぇ〜! ぴりっとする?
そう。そう。あと…天ぷらとか唐揚げとか。酢が入っているから、油で揚げた物をさっぱりさせる。
高橋さんが好きな食べ方は…?
よく聞かれるんですけどね、私はね、納豆!
納豆!?
抜群にいいですよ。
これは〜試してみよぅ!
そうだ、ゆずすこは、海外でも人気ですよね?
人気というか…輸出が16ヵ国。アメリカとか…
わぁ! これっ!
うん。ずっと気になっていた…。
一番遠いところはブラジル。アメリカにはドレッシングという製品がないんですよね。自分の家で作る。それにゆずすこを使ってもらうことが多いみたいですね。
ゆずすこが海外進出したきっかけというのは…
きっかけは〜もともと、海外に輸出したいな…というのはあったんですよ。海外を意識して作られた商品ではあったんです。
そうなんですね。
ロゴは…このアルファベットと日本語で?
日本語で並べたいときは、日本語で。英語がいいときは反対側を向ける。
なるほど。
これ分かるかな…? 日本らしさを出したいとデザイナーに頼んだら、ゆずすこって文字を侍の顔にしてくれた。分かるかな〜?
あーホントだ!
顔に見えます?
あ〜! お〜! え〜!
それでこの文字の並びだったんですね! 何か不思議な並びだなぁと気になってたんですよ。
海外でもこれは侍…日本製だとわかるようにしました。こういう面白いことがありますよっていうのも、ひとつの話題性なんですよ。
とても楽しいです。
あと…3000本に1本かな? 金ラベルのゆずすこがあるんですよ。
えー! それ皆に言いたい〜!
えー! それは知らなかった〜。
あとは、たまに「生ゆずすこ」というのを出します。通常のものは熱を通すのですが、熱を通さずに作ります。
次から次にワクワクがでてきますね! どこで買えるのですか?
ここ(柳川本店)だけですね。本数はそう多くありません。ホームページでお知らせしています。話題性と希少性も大切にしています。火を入れていないので新鮮な味わいですよ。
これは〜話題性・希少性ありますね。「生ゆずすこ」試してみたいです! では、厳しい審査を受けて認定される、ブランド認定品になって何か変わったことはありますか?
「ブランド認定品なんですね」って言われます(笑)。冠がついた感じですかね。より商品としての価値が上がる。
最後に、これからの野望を教えてください。
野望!? そうですね。この柳川で作った物とか、ここから発信した物を、海外の皆さんに伝えていけたらなぁ。というのがあります。
我々は食品会社なので、食品として発信して、感動して食べていただく、ということができたらと。食した人が、じゃ、これを作っているところに行ってみよう、柳川に行ってみよう。と柳川を訪ねてきてくださるといいなと思います。
柳川という市から、九州・海外へと意識されていることがよくわかりました。長く続いてきた酒造り粕漬けづくりのノウハウの上に「ゆずすこ」があることも。ちょっとやって出来た商品ではなかった! またひとつファンの商品が増えました。